『八百屋お七』
恋しい愛しい 吉三さま
大火に追われて逃げ込んだ
あの場所で出会うた 凛々しいお方
お会いしとうございます
もう一度 もう一目
恋しい愛しいあなたさま
どうぞこの想いを知ってくださいませ
ああ 吉三郎さま 吉三さま
もう一度 あなたさまにお会いできるなら
お七は何でもいたしましょう
たとえ地獄の業火に この身を焼かりょうとも
お七に悔いはございませぬ
そうだ 火をつけよう
この風が町へ広げてくれる
この火が吉三さまをお七の許へ
きっときっと 連れてきてくれる
愛しい恋しい 吉三さま
お七はこの恋のために夜叉となり
生きながら地獄へ堕ちましょう
それで吉三さまに会えるなら
お七は喜んで鬼にもなりましょう
おお 燃える ああ 焼ける
大火よ 炎よ
八百八町を焼き尽くし
お七を吉三さまの許へ
愛しい恋しいあの方を
お七の許へ連れてきておくれ