無 花 果

我は花弁のない花
我は花の姿を持たぬ花
人は我を見て 花と知らず
蝶も蜂も 我を花と思わず
無数の蕊を花托に抱き
色も香も持たぬ我は
果たして花であるのか
時が経ち 花托の中で熟した蕊が
ようやく我を慰める

我は花を持たぬ花
我は花を開く事無く実を成す花
我は面を隠す花
我は花ならぬ花

汝 その口唇で
我が花芯に触れよ
我は常世の花実
我の蕊を含めば
汝を甘美なる衣で包もう
我は面を隠す花が故に
汝の心の奥底に沈めた
隠されるべき秘密を暴く

「無花果」の写真は『浩士の写真日記』様よりお借りいたしました。
不躾なお願いを聞いてくださり、有難うございました。
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